地域の話題

大分県の観光と有料道路の無料化

九建設計株式会社
久米 卓

1.観光と道路無料化のネットワーク

大分県の有料道路無料化
▲大分県の有料道路無料化

  大分県では、平成22年6月からの高速道路無料化の社会実験に加えて、平成22年12月から3つの有料道路の無料化が始まっている。高速道路の無料化区間は、九州の中では一番長い全長88kmで、県内の高速道路の約半分が無料化となった。

 この無料化ネットワークが、大分県内の観光の活性化に大きな影響を与えている。
 ネットワークの主軸は、豊後水道の海の幸や、リアス式海岸の景観で知られる県南部の佐伯ICから、県北部の国東半島の神仏習合文化や豊後高田市の昭和の町付近にある宇佐ICまでの約100km(約1時間15分)を、通常料金750円での走行が可能となったルートである。
 その中間には、有料区間を通行して県中部の別府や由布院の温泉、県西部の天領であった日田の歴史やくじゅう連山の自然景観などへネットワークが拡がっている。

 さらに、無料化ネットワークのICと連結した大分空港道路の無料化による空港へのアクセス向上や、大分市内の米良有料道路・大野川大橋有料道路の無料化による市内の渋滞緩和などが、活性化の効果を増幅させている。
 実際に走行してみると、高速道路の交通量の増加や市内の渋滞の解消を肌に感じることができ、観光だけでなく県内産業全体の活性化や地域再生への効果を実感する。

2. 道の駅かまえにみる観光客層

 この無料化で有名になった施設の一つが「道の駅かまえ」である。佐伯ICから車で30分ほど走ると、宮崎県境付近の蒲江漁港の近くに、「道の駅かまえ」があり、豊後水道で水揚げされた海の幸が人気を集めている。
 名物の海鮮丼(1,050円)は評判で、高速道路の無料化なった6月末以降、駅の利用客は飛躍的に伸び、店の人の話として、「1日に350杯売れたこともあり、リピーターもお客さんも多い」と新聞にも掲載されている。(2010年10月17日 読売新聞 九州発 道の駅)

 道の駅の来場者について、千葉県にある農産物直販所が人気の「道の駅しょうなん」で、アンケートを実施したところ、「なんと来場者の75%は、地元や近隣の市町村などの地域住民だった」というデータがある。(2002年6月28日 生活新聞 博報堂生活総合研究所)
 「道の駅かまえ」のリピーターの多くも、県外からの観光客ではなく県内の人たちではないだろうか。

評判の海鮮丼 道の駅 かまえ
▲評判の海鮮丼 ▲道の駅 かまえ

3.観光と地域再生

地域活性化フロー
▲地域活性化フロー

  実際に無料化が始まってから、私の周りから聞こえてくる観光の話は、県外への旅行より、今まで用事がなければ行かなかった県内観光地への日帰り旅行などが多い。
 年に1回の海外や全国からの観光客も重要であるが、月に1度の県内の交流人口がさらに重要であることをこの無料化で感じている。
 「観光は住んでよし、訪れてよしの国づくり」は、観光立国のキャッチフレーズであるが、自分の住んでいる周りにこそ地域の魅力があり、再認識することが大切であると改めて思う。

 今回の無料化社会実験で、既存の社会インフラが時代に沿った使い方によって、地元の産業と結びつき、地域再生のきっかけになることが明確になってきている。
 九州新幹線の全線開通がなにかと話題となる今日この頃である。大分県には、新幹線の駅はないが、高速道路は東九州道や中九州道の延伸が進められており、道路ネットワークの完成に期待が寄せられている。
 新幹線などの交通インフラによる新たな風と、道路ネットワークによる各地の魅力向上をうまく連携させることが、九州全体のリピーター増加や地域再生に重要なことと感じる。

4.これからに思う

 私たち建設コンサルタントは、主に社会資本を効率的に整備する技術、長持ちするように維持管理する技術を向上させてきた。
 これからは、これまでの築いてきた財産を、変化する社会情勢に沿って最大限に活用し、地域再生に貢献させる技術の向上や行動が、私たちに求められていると感じる。
 この活用する技術を向上させ社会資本を整備することが、どれほど地域再生に効果があることなのか、社会に正確に理解してもらうことが、建設コンサルタントを担う次世代に希望を与え、今後の発展に必要なことではないだろうか。

(平成23年1月5日掲載)