地域の話題

天空に架ける日本一『九重“夢”大吊橋』

協同エンジニアリング株式会社
第二設計部 長岡 聡

九重夢大吊橋
▲長さ390m(日本一)、高さ173m(日本一)

各界からでっかい期待

大分県九重町が二十億円もの巨費を投じて建設した、歩道専用橋としては日本一の「九重”夢”大吊橋」が昨年10月にオープンし、観光の町に新たな魅力が加わった。

雄大なくじゅう連山や湿原の大自然、「九重九湯」と呼ばれるバラエティーに富んだ温泉、スキー場。これらを有機的に結び付け、どのように観光浮場を図るか。町民は大きな期待を抱いて見守っている。「建設前は『そげー金を掛けて造ってどうするのか』と反対の声もあったが素晴しい橋ができた。先のことを心配してもしょうがない。造った以上は成功してもらわんと」が町民のいつわらざる気持。一般開放前の町民見学会には町民の七割近い約八千人が詰め掛け、期待の大きさを物語った。渡った人々は皆「最高の景色」と絶賛。長さ三百九十メートル、高さ173メートル。ともに日本一。世界一の可能性もあり、ギネスブックへの登録準備も進む。

 標高は777メートル。つり橋の上から見ると、眼下に日本の滝百選に選ばれた震動の滝と女滝、子滝が、遠くに星生山、三俣山、泉水山などのくじゅう連山の山並みが横たわる。周辺の鳴子川渓谷には大樹の原生林が広がり、新緑や紅葉の名所として知られる。まさに360°のパノラマで、文句なしの絶景である。”夢”大吊橋管理センターにはオープン前から問い合わせの電話が殺到。多い日は300件以上も。新聞やテレビ、雑誌からの取材依頼も多く休みを取れないほどに忙しい。当初は年間30万人の観光客を見込んでいたが予想をはるかに超える観光客であった。

年・月日数入場者(人)平均(人/日)累計(人)
H18.103 16,350 5,450 16,350
H18.1130 371,270 12,375 387,620
H18.1230 121,118 4,037 508,738
H19.130 105,909 3,530 614,647
H19.230 132,308 4,725 746,955
合計28 746,955 6,173 746,955

建設の道のり「山あり谷あり」

 計画が実際に動き出したのは1993年。町が策定した第二次総合計画に「観光リゾートづくりのための観光振興計画の策定」がうたわれた。

 翌年2月には観光振興計画を策定、観光の再生、創造として「スキー場」「ゴルフ場」と並ぶ三つの柱の一つに掲げられた。「観光再生」の位置付けを得たことで夢物語は急展開。

地元や観光関係者らの強い要望を受け、99年度に設計コンペを実施してプランを策定。2000年には過疎化の歯止め、若者の定住を目的とした「鳴子川渓谷および周辺計画書」を策定。02年度に地形、路線測量、地質調査を実施。04年に工事に着手した。しかし、建設は平坦な道のりではなかったはず。同年には隣接の 玖珠町 との合併協議にからみ、合併のネックとなる大型事業の一つに挙げられた。05年には「合併しないペネルティー」と揶揄された県の過疎債却下問題も。さらに、当初は事業費約15億円の計画が急峻な地盤の補強工事が必要となり、約20億円まで膨れ上がった。町の関係者は当時を振り返り「つり橋がやり玉にあげられ、眠れない日々が続いた」と。さらに「問題を乗り越えオープンにこぎつけほっとしている。必ず予想を超える観光客の出足で当分は毎日が充実の日々になりそう」と。

 年間30万人。 九重町 は大吊橋を訪れる観光客を当初はこう見積った。「町内には年間465万人の観光客が訪れるが、宿泊客は約40万人と一割にも満たない。何としてでも通過型から滞在型への体質改善が求められる」町観光課長は力を込める。宿泊客が隣接する由布市の湯布院温泉や 熊本県小国町 の黒川温泉に流れることは以前から指摘されていた。町内の有志には「橋だけではなく、昨年11月にラムサール条約に登録されたタデ原湿原や日本一の地熱発電、温泉などをセットで売り出すべき」と力説する。町は観光客の周遊性、回遊性を増すため外部に委託し、町外者の視点で考えたモデルコースを策定中であり、本年度中にまとめる予定とのこと。「橋には一度行けば十分。何度も行かない。」「橋自体が展望台。四季折々や天候によって景色が違ったりする感動を覚えられるはず。」さまざまな声が聞かれる中、地元としてはリピーター確保が大きな問題である。また、アクセス道路の整備も緊急の課題である。昨年の7月に集中豪雨で被害を受けた、国道210号から九酔渓を通ってつり橋に至る県道飯田高原中村線は現在も片側通行の工事箇所が残る。県土木事務所では抜本的改良も考えて検討中だが用地交渉が難行し苦慮している。工事をしていなくても紅葉シーズンは渋滞する箇所。ことしはどうなることかと危惧。一日も早い全面的な復旧や抜本改良等が望まれる。

 また、右岸の北方側についても、アクセス道路に農林道を使用しているが周遊性を増すためには抜本的改良が必要であり、駐車場等の確保も考えなければならない。町が命運をかけた”夢”の橋。失敗に終わらせる訳にはいかない。大吊橋を最大限活用し、地域活性化に向けて行政と地域住民の一体となった取り組みが求められる。

パイロットロープ工主塔架設工
パイロットロープ工(2005.09)主塔架設工(2005.10)
主索架設工床桁架設工
主索架設工(2006.04)床桁架設工(2006.05)